事例に見る従業員満足度向上のポイントと実践のためのアンケート作成方法 | 株式会社エモーションテック

COLUMN

コラム・資料

2023.04.14

Fri

SHARE

事例に見る従業員満足度向上のポイントと実践のためのアンケート作成方法

従業員満足度の重要性が増している理由

以前から、従業員満足度の向上を重要視している企業は少なからず存在しました。しかし、なぜ、近年になってより注目されるようになったのでしょうか。主な理由として次のような点が挙げられます。

従業員の離職防止につながる

従業員が現在に満足していれば、当然、定着率は高まります。つまり、従業員満足度を高めれば、離職防止につながると言えるのです。多くの優秀な人材が自社に定着すれば、利益向上も見込めるでしょう。

少子高齢化により生産年齢人口が減少

国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」(注1)によると、日本の生産年齢人口は、2020年で「7,341万人」、2025年は「7,085万人」と減少する方向で予測されています。

類を見ないスピードで少子高齢化が進む日本において、この傾向は今後も続くでしょう。そうしたなかで従業員満足度の向上は、企業にとって大きな課題と言えるのです。

売り手市場が続き人材確保が困難

大学生が就活の際に参考とする就職四季報(東洋経済新報社)をご存じでしょうか。ここには、企業ごとの離職率が掲載されており、どういった企業を選ぶか、学生の情報源となっています。つまり、従業員満足度を向上させて離職率を下げれば、今いる従業員の定着だけでなく、新規採用にも大きな効果を発揮すると考えられます。

ここで株式会社リクルートホールディングスが2019年4月に発表した「第36回 ワークス大卒求人倍率調査」(注2)を見てみましょう。2020年3月卒業予定の大学生・大学院生の求人倍率は1.83倍と高水準を維持し、売り手市場となっています。

ただし、現在は、新型コロナウイルス感染症の影響があるため、2021年以降の状況が不透明である点は否めません。しかし、「従業員満足度が低く離職率が高い」企業が優秀な人材の確保に難しい点に大きな変化はない、と言えるでしょう。

帰属意識が低下した従業員の早期発見を実現する

日本でも数年前からテレワークの導入を進める企業が増え始めました。そして2020年5月現在、非常事態宣言をきっかけとして、導入する企業はさらに増加。ただし、テレワークにはさまざまなメリットがあるものの、対面でのコミュニケーションが減り、企業への帰属意識が薄れやすくなるというデメリットもあるのです。

帰属意識が薄れると、従業員満足度も下がりやすいと言えます。しかし、従業員満足度アンケートを行い、帰属意識が低下している従業員を発見すれば、迅速に対応できるのです。

また、従業員満足度の向上は、顧客満足度の向上にも大きく寄与します。なぜなら、満足度が高い従業員は、仕事に対するモチベーションも高いため、接客や商品・サービスの品質向上、新規顧客の開拓やリピーターの増加、といったプラスの循環を生み出すからです。

従業員満足度を向上させるための取り組みや成功事例

次は、どうすれば従業員満足度の向上を実現できるのか、その施策例や、従業員満足度の向上に取り組んでいる企業事例を紹介します。

従業員満足度を向上させるための施策例4つ

まず、従業員満足度を向上させる施策例についてです。

ビジョンの共有

一人ひとりが企業のビジョンを理解し、全体として同じゴールを目指せれば、従業員満足度の向上につながります。従業員同士や上司と部下などの間で上手にビジョンを共有するには、密なコミュニケーションを重ねて相互に理解し合える機会の創出が必要でしょう。

職場環境の整備

整った職場環境の例として挙げられるのは、集中して業務を行える集中ルーム、業務の合間をリラックスして過ごす場となるカフェスペース、部署やチームの垣根を越えたコミュニケーションを実現するフリーアドレスなどです。これらを従業員の要望をもとに設置して、職場環境を整備します。

福利厚生の充実

福利厚生には、健康・介護・雇用・労災・厚生年金保険など法律で定められている法定福利厚生と、企業が独自に制定している法定外福利厚生のふたつがあります。従業員満足度向上に寄与するのは、法定福利厚生はもちろん、法定外福利厚生の充実です。

法定外福利厚生と一口に言っても、社員食堂、家族・住宅手当などのほか、独自の休暇、旅行、資産形成、健康診断やスポーツ施設の利用補助、育児支援、資格取得や書籍購入の補助教育研修など幅広いもの。これらを従業員の要望を加味しつつ、充実させていきます。

従業員に自主性を持たせる

指示系統がトップダウンで、従業員は常に指示に従うだけ、そんな企業では従業員の自主性は育ちません。また、自主性が育たなければ、従業員は仕事にやりがいを持てなくなるため、従業員満足度も低下してしまうでしょう。従業員が自主性を持って働ける環境のため、MBOやOKRの活用を視野に入れてみてはいかがでしょう。

そのほか、企業全体の風土、文化を改善する、評価基準を明確にするなども有効です。

関連記事:
【事例付き】従業員満足度への取り組みと改善方法

従業員満足度の向上に取り組んでいる企業事例

続いて、実際に従業員満足度の向上に取り組んでいる企業事例です。Great Place to Work Institute Japan(GPTWジャパン)が毎年発表している、日本国内における働きがいのある会社ランキングから2社、紹介しましょう。

多様性と平等性を大切にさまざまな機会を提供

主に外資系・日系グローバル企業における転職・採用支援を行っているA社は、外国人の従業員も多く、日本のオフィスで働いている約半数が外国人です。これは業種によるからではありません。A社が多様性を大切にしているからです。

人事評価では、30か国以上の外国人も含めすべての従業員を平等に評価し、約3割が女性の管理職(厚生労働省認定マーク「えるぼし」の最高位である3つ星を獲得)。ここからは、A社がいかに多様性、平等性を大切にしているかが見て取れます。

また、男性にも育児休暇を提供し、男性の育児への参加を推奨しているのです。

人材育成や社内活性化を部署やチーム体制で取り組む

組織を活性化させるIT×コンサルティングサービスを行っているB社では、従業員エンゲージメントの向上を目的として、全社を横断したふたつのプロジェクトを同時進行しています。

ひとつは、人材の採用、育成、定着を目指し、設置された「エンゲージメントデザイン部」。この部での主な業務は、社内施策やイベントの企画運営で、部署、上下関係の垣根を越えたコミュニケーションの場を提供し、エンゲージメントを推進しています。

そして、もうひとつは、現場主導で社内の活性化にかかわる業務を行うチーム「スタツク」。どちらも半期ごとにメンバーを刷新し、常に新しい風を入れながら従業員の自主性を育みつつ、組織改革に取り組んでいるのです。

従業員満足度を改善していくうえでの指標の重要性

従業員満足度を向上させるうえで重要なポイントは、正しい指標で計測を実施すること。明確な目的を持たず、ただ満足か不満かを調査しても、改善ポイントは見つかりません。一般的な従業員満足度アンケートの指標ふたつから、それぞれの概要を説明しましょう。

従業員満足度アンケートを行ううえで欠かせない指標

ES(Employee Satisfaction)

ESは、企業・上司・業務・職場環境・待遇への満足度や企業文化・経営方針への共感度などから質問を設定し、それぞれの質問の回答について3~5段階で評価してもらい計測するものです。Employee Satisfactionの頭文字を取ってESと呼ばれています。

eNPS℠(Employee Net Promoter Score)

eNPSは、顧客満足度の指標のひとつであるNPSを従業員満足度の指標に変換したもので、従業員に自社で働くことを家族や友人、知人にすすめたいかどうかを0~10の11段階で評価してもらいます。この0~11の数値を、「推奨度」と呼びます。

そして、推奨度0~6を批判者、推奨度7・8を中立者、推奨度9・10を推奨者として全体を集計した後、推奨者の割合から批判者の割合を引くとeNPSの数値が算出されるのです。Employee Net Promoter Scoreの頭文字を取ってeNPSと呼ばれています。

従業員満足度アンケートの指標でeNPSがおすすめな理由

一般的に、従業員満足度アンケートを行う際に指標とするのはESでしょう。しかし、2017年4月に弊社が行った「現在の就業先に対する満足度調査」によると、職場環境を評価する指標と強い統計関係にあるのは、相関関係にあるのは満足度よりも推奨度でした。

調査の結果、「離職予定時期」「自分の力を発揮している実感」「働きがい」「人間関係」「社会貢献への実感」などの項目において、満足度よりも推奨度で見るほうが、統計的関係が強いと確認できました。

さらに回帰分析では、推奨度が1点上がると「離職までの期間が11%伸びる」「働きがいは8%アップする」「自分の力を発揮している実感は5%アップする」「人間関係が良好であるという実感は5%アップする」「社会貢献への実感は6%アップする」という結果が出ています。

また、働きがいや自分の力が発揮できていると感じる度合いについて7点満点で評価してもらい、推奨者と批判者の平均点を比較しました。すると、「働きがい」では2.00ポイント、「自分の力が発揮できていると感じる度合い」では1.29ポイント、推奨者が批判者を上回ったのです。

この結果からも、従業員の現状をより正しく把握するには、ESよりもeNPSのほうが効果的だと分かります。

関連記事:
従業員満足度の計測指標としてeNPSがおすすめな理由

従業員満足度アンケートの項目と流れ

従業員アンケートはどのように作成すればよいのでしょうか。eNPSを指標とした場合の項目と流れについて見ていきましょう。

従業員満足度アンケートの項目

まず、eNPSを指標とした場合の項目です。

eNPSに関する質問

0~10の11段階で、自社を家族や友人、知人にすすめたいかどうかを聞きます。

推奨度に影響を与えた具体的な体験

従業員が推奨度において、なぜその評価をしたのか、具体的な体験を聞きます。

自由回答にすると評価の裏付けがとりやすく、その後の改善も進めやすく効率的でしょう。ただし、まったくの自由回答にしてしまうと無回答が増えてしまう可能性も高いものです。「会社」「上司」「職場環境」「待遇」「部署・チーム」「人事評価」などいくつかの項目を設定し、5段階で回答してもらうのもよいでしょう。

また、設問数を増やせばより内容を掘り下げていけます。しかし、あまり多過ぎると回収率が下がる可能性もあるため、10~15問程度に抑えたほうがよいでしょう。

家族、知人や友人に自社をすすめた経験があるかどうか

実際に家族、知人や友人に自社をすすめた経験があるか、すすめた場合、どういった形ですすめたのか、すすめた経験がない場合、なぜすすめないのかなどを聞きます。

従業員満足度アンケートを行う際の流れ

次にアンケートを実施する際の流れについて見ていきましょう。

仮説を立てる

まず自社の課題を洗い出し、優先順位を付けて仮説を立ててから、従業員満足度アンケートの設問を設定します。

調査の実施、回収

従業員満足度アンケートを実施し、回答を回収します。回収率を上げるには、社内報やメール、社内SNSなどを使い、宣伝や告知をしっかりと行う、アンケート用紙と回答例をあわせて配布するなどが効果的です。

分析を行い、その結果から改善策を立案する

回答を回収したら、分析します。少々難易度は高くなりますが、重回帰分析という手法を使うことで、どういった要素が満足度に影響を与えているのかを明確にすることができます。

重回帰分析で出た結果をカスタマージャーニーマップにまとめると、推奨度を高めるのに最も影響を与えた項目や設定した項目のうちどれが一番、顧客から評価されているかなどが分かります。たとえば「オペレーターの電話対応は推奨度を高める影響が強いが、実際の顧客の評価は低い」といった事がわかります。

これはeNPSでも応用できます。たとえば、「社内設備の充実は推奨度を高める影響が強いが、実際の従業員の評価は低い」「コミュニケーションの強化は推奨度にあまり影響しないが、実際の従業員の評価は高い」などのことが分かるのです。そして結果をもとに、改善策を立案していきます。

改善策の効果検証を行う

改善策を実施したら、効果検証を行うため、一定期間を置いて再び従業員満足度アンケートを実施します。改善策が上手く機能していたら別の課題を探し、もし解決していなければ、再び改善策を立て直しましょう。

関連記事:
従業員満足度アンケートの目的と項目作成時の注意点

従業員満足度アンケートで成果を出すためのポイント2つ

従業員満足度アンケートは設定、実施、回収、分析、結果をもとに改善策の立案、効果を検証するためにまた実施……とさまざまな過程を経るため、時間とコストを要します。そのため、できるだけ効率的かつしっかりとした効果検証を行い、成果を出さなくてはなりません。

成果を出すためにはどうしたらよいのでしょうか。ふたつのポイントを紹介します。

1.事前に仮説を立てて実施する

ひとつ目は、アンケート項目の設定前に自社の課題を洗い出し、そこから優先的に改善する課題を決めて、仮説を立てるというもの。仮説をもとにアンケート項目を決めれば、結果から、現状の把握や改善への取り組みがスムーズに進むため、効率がよくなります。

2.定期的な従業員満足度アンケートの実施

1回だけでは、改善策が機能したのか、その他の課題はどうなのか、までは分かりません。従業員満足度アンケートは、設定、実施、回収、分析、結果をもとに改善策の立案、効果を検証するためにまた実施といったサイクルが重要です。

特に、テレワークを導入している企業は、帰属意識の低下を防ぐ意味でも定期的な実施は欠かせません。

従業員満足度の向上が企業の継続的な成長を実現する

企業の継続的な成長に重要なのは、従業員に愛着を持ち、信頼される企業になること。そのためには、賃金をアップする、福利厚生を充実させる、適切な人員配置をする、といった従業員のモチベーションを高める施策が必要です。

しかし、適切な施策を取るにはまず、「従業員が何をどのように感じているか」を知らなくてはなりません。そこで最適なのが、従業員満足度アンケートなのです。ただし、従業員満足度を正しく知るには適切な指標での計測が必要となります。

そこで、おすすめとなるのが、従業員が自社をどれぐらい信頼しているかを見るのに最適な指標eNPSです。これを基に従業員満足度アンケートを進めれば、離職率の低下や優秀な人材の獲得など、企業にとって望ましい効果が見込めるでしょう。

つまり、正しく適切に従業員満足度アンケートを実施すれば、従業員満足度の向上につながり、それによって企業の継続的な成長が実現できると言えるのです。

eNPS℠調査事例

首都圏で働く方々を対象に調査を行い、結果と合わせてeNPS℠を活用したアンケート作成方法や分析手法を紹介している資料です。
働き方改革の実現に向けて少しでも参考にしていただければ幸いです。

出典:

(注1)第1部 特集 データ主導経済と社会変革|総務省

(注2)第36回 ワークス大卒求人倍率調査(2020年卒)|リクルート(PDF)

参考:

 2020年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング155社|GPTWジャパン

 顧客体験を向上させるために重要なNPS®~そのアンケートのつくり方のポイント~|Emotion Tech

SHARE

従業員満足度アンケートの目的と項目作成時の注意点 日本人の特徴に合わせた、eNPSの活用方法とは?