【徹底解説】NPS®(ネット・プロモーター・スコア)とは?満足度との違いから、分析・活用手法まで
NPS®とは、Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)の頭文字をとったもので、Net=正味・最終的な、Promoter=推奨者・おすすめする人、Score=点数・指標をそれぞれ意味しています。日本語では「顧客の正味推奨者比率」と訳され、顧客ロイヤルティ* の計測に活用される指標です。
*顧客が特定のブランドや商品、またはサービスに対して感じる「信頼」や「愛着」のこと
本資料では、顧客体験向上の鍵となるNPSについて詳しく解説しています。

NPS(ネット・プロモーター・スコア)とは?
NPSは、顧客へのアンケートや調査で特に用いられる指標で、「あなたは、当社の製品やサービスを親しい友人や家族にどの程度おすすめしたいと思いますか?」といった質問を投げかけ、回答を集めることで、算出することが可能です。
2003年にアメリカで開発されて以降、アップルやグーグル、アマゾンなどをはじめ、世界中の先進企業で活用されており、近年では日本国内の企業においても浸透しつつあります。
NPSの計測方法
おすすめ度を聞き、11段階の回答を集める
NPSを計測するためには、まず、以下の様な質問を調査やアンケートで投げかけます。
「あなたは、当社の商品(またはサービス)を、親しい友人や家族にどの程度おすすめしたいと思いますか?」
この質問に対して、顧客は0~10の11段階で回答します。そして、0~6点をつけた人を「批判者」、7・8点をつけた人を「中立者」、9・10点をつけた人を「推奨者」とします。推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値がNPSの点数です。
つまり、NPSは「9・10点をつける推奨者の割合を増やす」、または「6点以下をつける批判者の割合を減らす」のどちらかによって、点数を伸ばすことができます。
顧客満足度とNPSの違い
頭の満足か、心の満足か
従来の顧客満足度調査では「満足度が高いのに売上が向上しない」といったケースが多く見られました。
なぜこの様な事象が発生してしまうのでしょうか?
実は、「満足している」と回答する人の中には、「頭で満足している人」と「心で満足している人」の2タイプがあるとされていて、この違いが重要だと考えられています
- ・頭の満足:安さ・便利さ・近さなど、合理的な基準で満たされる満足
- ・心の満足:信頼・安心・好意など、感情的な基準で満たされる満足
以下のデータは、それぞれ「不満」と回答した人、大変満足と回答した人の中でも「頭の満足」が満たされている人、「心の満足」まで満たされている人によって、クレジットカードの利用金額がどの程度変化するかを示しています。
「頭の満足」が満たされている人は、不満と回答した人と利用金額は殆ど変わらず、「心の満足」が満たされている人のみ、購買行動に変化が見られました。
つまり、「顧客に満足してもらって、サービスや商品を使い続けてもらう」という目的を達成するためには、「頭の満足」ではなく「心の満足」を満たす必要があると考えられます。
NPSは、この「心の満足」を測ることができる指標だと考えられています。
NPSの3つの特徴・メリット
NPSには、大きく3つの特徴があります。
1.顧客の評価をシンプルに計測できる
従来の満足度調査などの調査手法と比べると、おすすめ度合いを聞く質問だけで良いため、非常に簡単に回答してもらうことができます。
シンプルな質問であることによって、
- ・購入後アンケートや対応後アンケートなど、様々な場面で使いやすい
- ・他に聞きたい質問を合わせて聞くことができる
といったメリットが生まれてきます。
2.顧客の購買行動や、売上・利益など事業指標と関係が強い
あるEC(インターネットショッピング)サービスで、「あなたは当ECサービスの利用を、親しい友人や知人にどの程度おすすめしたいと思いますか?」という質問の回答と、その回答を行った人の購買回数・購買単価を調査しました。横軸はNPS質問に対する点数(おすすめ度)、縦軸はそれぞれその点数をつけた人達の平均購買回数、平均購買単価を表しています。
すると、このグラフの通り両社には強い関係性があり、「おすすめ度が高い人ほど、このECサービスを良く利用し、たくさん買っている」ことがわかります。
3.良い点と悪い点の両面を知ることができる
NPSの3つ目の特徴は、良い点と悪い点の両面を知ることができる点にあります。
従来の満足度調査では、どちらかというと「不満」の要因を潰すことに重きが置かれ、結果として課題の発見やクレーム対応に終始してしまうケースが多く見られました。
一方で、NPSは「推奨者を増やす方法」と「批判者を減らす方法」とに分けて考えることができ、特に推奨者を増やす場合にはサービスの「強みを伸ばす」戦略を取ることが可能です。商品やサービスの競合優位性を高めたい場合などでは、有効な指標だと考えられます。
NPSの活用方法や改善ステップ
NPSは、顧客がそれまでにどの様な体験をしたかによって決まる
他の人にすすめたいと思ってもらうためは、商品自体が優れているだけでなく、購入するプロセスやアフターフォローに至るまでの様々な体験で、価値を感じて貰う必要があります。
こうした体験のことを、顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス、CX)と呼びます。NPSを高めるためには、この顧客体験がどの様に受け入れられているのかを知り、重要な顧客体験を改善していくことが重要です。
NPS質問と顧客体験(CX)に関する質問を組み合わせる
NPSの向上ポイントを把握するためには、NPS質問(他の人にすすめたいと思う度合い)に加えて、各顧客体験に対する質問を合わせて調査することが有効です。
回答者は、それぞれの顧客体験に対して、「マイナスに影響した」~「プラスに影響した」まで評価を行っていきます。
こうした質問によって、「何が理由でおすすめしたいか(したくないか)」を分析するためのデータを得ることが可能になります。
顧客にとって「重要な体験」とは何か?を考える
NPSと顧客体験に対する回答が得られた後は、そのデータを分析して結論を導いていきます。このとき、それぞれの顧客体験の平均点を算出し、「点数が低い=顧客にとっての課題」だと認識してしまうケースがあります。
もちろん、点数が低い(つまり不満が大きい)体験は改善するに越したことはないのですが、まずは「何が顧客にとって重要な体験であるか」をしっかりと分析する必要があります。
あるファストファッションのアパレルブランドでNPS調査をした例をご紹介します。
赤い線は「顧客の現状(満足・不満の状態)」を表しています。赤い線が上に向かうほど満足されていて、下がっている部分は不満に思われていることを意味しています。
このグラフでは、「商品の長持ち度合い」について不満が大きく出ている(評価が低い)ことがわかります。
一方で、青い線はNPSに対する影響の度合い、つまり「顧客にとってどの程度重要な体験か」を示しています。「商品の長持ち度合い」を見てみると重要度はそれほど高くないのがわかります。それよりも、商品に関しては「商品の価格」、その他の「問い合わせ時の対応」や「店舗へのアクセス」などが重要だと認識されているようです。
つまり、データからわかることは「商品の長持ち度合いの満足度は高くないが、顧客にとってあまり重要ではない」ということです。そして同時に、「問い合わせ時の対応」は顧客にとって(NPSにおいて)とても重要だが、不満が発生してしまっていることもわかっています。
こうした状況下においては、「問い合わせ時の対応」を改善することが、NPS向上に最も効果的だと考えられます。
データを分析する際には、まず「顧客にとって重要な体験は何か」を見極めることが大切です。
NPSを正しく活用し、CX(顧客体験)の向上へ
NPSは、顧客の購買行動に大きな影響を与える「顧客ロイヤルティ(信頼や愛着の度合い)」や「心の満足」を、簡単かつ正確に計測できる指標です。
また、NPS調査から得られたデータをしっかりと分析することで、一連のCX(顧客体験)の中で、「どの弱みを改善し、どの強みを伸ばすべきか」に対する明確な結果を得ることが可能です。
一方で、NPSそれ自体は指標であり、調査をするだけでは何も変わりません。重要なのは、こうした顧客の声と向き合い、より多くの価値提供ができるように改善行動へ取り組むことです。そのためには、データの扱いだけでなく、顧客の声を事業に取り入れていくための風土や文化づくりも欠かせない要素と言えるでしょう。
NPS(ネット・プロモータ・スコア)解説資料はこちら
本資料では、これまでにご紹介したNPSの特徴を始め、NPSに関するよくある質問や NPSが合う業界・合わない業界などについても解説しています。
ぜひご覧ください。
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