NPS®とは?ロイヤルティ向上につながる活用方法を詳しく解説! | 株式会社エモーションテック

NPS®とは?ロイヤルティ向上につながる活用方法を詳しく解説!

このコラムの執筆者
梅川 啓

株式会社エモーションテック Marketing Manager 

複数企業の事業責任者を歴任したのち、2020年よりエモーションテックにCXコンサルタントとして参画。製薬会社や金融機関、化粧品メーカーのNPSプロジェクトやCXマネジメントの支援に携わる。2022年よりマーケティングに従事し、各種セミナーやイベントに登壇。

NPS®(Net Promoter Score)とは、「顧客ロイヤルティ(企業やブランドに対する愛着・信頼の度合い)」を数値化する指標です。

「あなたはこの商品・サービスを、親しい友人や家族にどの程度すすめたいと思いますか?」というシンプルな質問に対し、0点〜10点の11段階で回答してもらい、「推奨者(9〜10点)」の割合から「批判者(0〜6点)」の割合を引いてスコアを算出します。

NPS®は、このたった一つのシンプルな質問から、顧客ロイヤルティを数値化することができます。またNPSは収益や事業成長との相関が強いことから、欧米で多くの企業に活用されており、グローバルスタンダードとなっています。日本国内においてもCX向上における先行指標として導入をする企業が増えています。

本記事ではNPSの特徴・メリットを始め、実際の活用事例まで詳しくご紹介していきます。

 

NPS®(ネット・プロモーター・スコア)とは?

NPS®とは「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略で、顧客ロイヤルティを数値化する指標です。

「あなたはこの商品・サービスを、親しい友人や家族にどの程度すすめたいと思いますか?」というシンプルな質問に0-10点の11段階で回答してもらい、その結果を分類してスコアを算出します。

NPSの解説

従来の「顧客満足度が「満足したか」という過去・現在に対しての尺度を問うものである一方で、NPSは「おすすめしたいと思うか」という未来の行動に対しての尺度を問うものであり、将来の購買行動や事業成長率と高い相関関係があることが証明されています。

関連記事:
顧客ロイヤルティとは?顧客を引き付けるマーケティング手法

NPSの計算方法と3つの分類

NPSを計測するためには、「あなたは○○を友人や知人に、どの程度すすめたいと思いますか?」と質問し、0〜10点で評価してもらいます。

その中で0〜6点を付けた人を「批判者」、7〜8点を付けた人を「中立者」、9〜10点を付けた人を「推奨者」と分類します。それぞれの特徴は以下の通りです。

分類点数特徴
推奨者 (Promoter)9〜10点ロイヤルティが高く、周囲にポジティブな口コミを広げ、再購入率も高い顧客。
中立者 (Passive)7〜8点サービスには満足しているが、競合他社への乗り換えも検討する層。
批判者 (Detractor)0〜6点不満を持っており、ネガティブな口コミを広めるリスクがある層。

NPSの計算方法

NPSは「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた数値のことを指します。

仮に推奨者が40%で批判者が25%だった場合は、40%−25%で「15」がNPSの値となります。
推奨者が増えるほど数値が高くなり、批判者が減るほど数値が低くなります。

NPSの計算例

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NPSの業界平均スコアは?日本におけるベンチマークとNPS向上の秘訣

NPSにおける2つの調査手法

NPSを効果的に活用するためには、やみくもにアンケート調査を行うのではなく、「タイミング」と「目的」を明確にして、それぞれを使い分けることがポイントです。NPS調査には「リレーショナル調査」と「トランザクショナル調査」という大きく2つの調査手法があります。

リレーショナル調査:全体像を把握する

リレーショナル調査とは、企業やブランド全体に対する顧客のロイヤルティを測定するNPS調査です。四半期や半期に一度、あるいは年1回など、顧客全体に対して定期的に実施し、顧客ロイヤルティ状況を把握するとともに、どこに課題があるのかを俯瞰的に捉える役割があります。

  • 目的: ブランド全体への愛着度を測り、競合他社との比較や、経営指標(KPI)として活用する。
  • 活用シーン: 経営層へのレポート、中期経営計画の効果測定、製品ラインナップ全体の評価など。

リレーショナル調査を行うことで、「昨年と比較してファンが増えているか」「競合と比べて自社の立ち位置はどこか」というマクロな視点での健康診断が可能になります。

トランザクショナル調査:顧客体験を個別最適化する

トランザクショナル調査とは、顧客との具体的な接点(タッチポイント)の直後に実施するNPS調査です。「商品購入後」「カスタマーサポート対応後」「Webサイトでの手続き完了後」など、それぞれのタッチポイントにおける顧客評価を継続的に取得し、課題を特定、そして改善状況のモニタリングを行います、

  • 目的: 特定の体験(トランザクション)における課題を特定し、現場レベルでの即時改善につなげる。
  • 活用シーン: コールセンターの品質改善、店舗スタッフの接客評価、UI/UXの改善など。

トランザクショナル調査は、タッチポイントを持った直後に顧客からの評価を取得することで記憶が鮮明なうちに評価を得られるという利点があります。「なぜその点数をつけたのか」という具体的な理由(VoC)が集まりやすいため、現場のCX改善サイクルを高速で回すのに適しています。

2つを組み合わせて「ロイヤルティの健康診断」を行う

NPSを活用し、ロイヤルティ向上やCX向上を実現させている企業の多くは、この2つの調査をうまく組み合わせて運用しています。

  1. リレーショナル調査で、顧客体験全体の**「どこに問題があるか(ボトルネック)」**を特定する(例:商品品質は良いが、サポート評価が低い)。
  2. トランザクショナル調査を重点箇所(例:サポート対応後)に設定し、**「なぜ悪いのか(真因)」**を深掘りして改善する。

この**「全体把握(リレーショナル)」×「改善モニタリング(トランザクショナル)」**のサイクルを以下に組織の中に定着させていくかが大きなポイントとなります。

関連記事:
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?顧客体験向上のポイントや事例を解説

NPS調査の設計・分析方法

ではNPS調査をロイヤルティ向上やCX向上に繋げていくためには、具体的にどのように設問を作り、そして分析していくのかを詳しくみていきましょう。

NPSの設問設計では「あなたはこの商品を親しい友人や家族にどの程度すすめたいと思いますか?」という基本の質問に、NPSに影響を及ぼした体験や顧客の属性などの具体的な設問を組み合わせることが非常に有効です。

これは、どの顧客体験や環境がNPSの点数をつける上で影響したかを知る必要があるためです。ただ単にNPSを計測するだけでは具体的に改善すべき課題を明確にすることができないため、NPSの改善ポイントを特定するためには顧客体験を細分化する必要があります。

以下の図は、NPSに影響していると考えられる顧客体験を整理したものです。

体験を整理するコツは来店前の認知段階から購入後まで、顧客とどのような接点があるかを具体的にイメージしながら考えることです。

顧客体験を整理することが出来たら次は質問設計に落とし込みます。NPSにどの体験が影響を与えているか明確にするためには、各項目が0〜10点のおすすめ度をつけるにあたってどの程度のプラスもしくはマイナスに影響したかを聞いてみましょう。

具体的な調査票の例としては以下のようなものが考えられます。

アンケート調査票のサンプル

NPS調査をする際の質問設計については是非こちらの記事もご確認ください。

関連記事:
NPSの効果的な調査方法とは?調査票の作成方法や調査設計のコツを解説
アンケートの作り方 | 顧客理解につながるコツを解説

NPSを使った分析方法

回答を集めた後の分析では、どの顧客体験がNPSに影響を与えているのかを調べます。

NPSにどの顧客体験が影響しているかを分析するには、NPSを目的変数、顧客体験を従属変数とした重回帰分析といった統計分析を活用した手法が望ましいと言われています。

ただ、難しい場合はNPSに対して何が最もマイナスもしくはプラスに影響しているか、各体験の平均点を比較するのも一つの手段です。

上記の例に続いてあるアパレルショップで、NPSに何が影響しているかを深く掘り下げて調査を行った事例では、顧客体験の中でも「店員の接客」が最も影響していることがわかりました。

また、より詳細に分析を行ったところ「店員の接客」には「親身さ」がプラスに影響している一方で、「レジ対応」が強く評価を引き下げている事がわかりました。

このようにNPSに対して何が影響しているか詳細に分析することで、具体的な課題を発見し、より収益向上に直結する打ち手を考えることができるようになります。

関連記事:
NPS®調査の分析方法とは?CX向上につながる集計と分析のポイント
アンケートでよく使う分析手法 | 基本から応用まで解説

NPSを社内に導入し、活用するためのポイント

NPSは「測って終わり」ではありません。調査結果を分析し、それに基づいた改善アクションこそが何より重要なポイントです。エモーションテックが多くの企業様をご支援する中で見えてきた、成功のポイントを2つご紹介します。

1. スコアだけでなく「VoC(顧客の声)」を分析する

「NPSがマイナス30点だった」という数字だけに一喜一憂しても改善は進みません。重要なのは、点数とセットで回答されるフリーコメント(VoC)の分析です。

  • 推奨者は、自社のどの強みを評価しているのか?(強みの強化)
  • 批判者は、どの体験で躓いたのか?(弱点の補強)

上にあげたような統計解析を用いることはもちろん、テキストマイニングや生成AIなどの技術を活用し、フリーコメントなどの定性的なVoC(顧客の声)からも何が課題となっているのかを捉え、打つべき施策の優先順位が明確になります。

2. 現場へのフィードバックループを回す

調査結果を経営企画室やマーケティング部だけで抱え込んでいないでしょうか? NPS向上の鍵は、「現場(店舗、コールセンター、開発部門)」へのフィードバックにあります。

批判的な意見も含めて現場に共有し、「お客様はこう感じている。ではどう変えるか?」を現場主体で考える文化を作ること。このフィードバックループが回っている組織ほど、NPS改善のスピードが早く、結果として業績も向上していきます。

関連記事:
【マネジメント向け】NPS®による改善を現場に浸透させる4つのポイント
NPS®︎改善に必要なポイントとは?最良の顧客体験を届ける秘訣を紹介
テキストマイニングとは?生成AIによる進化についても解説

NPS®と顧客満足度の違い

これまで、顧客の声を聞く指標として「顧客満足度(CS)」が多くの企業で利用されてきました。
顧客満足度とNPSはどのように異なるのでしょうか。

大きく違うのは、「収益性との相関が認められるかどうか」という点です。

顧客満足度の調査では「満足度」を点数化し評価しますが、これはあくまでも現時点での評価を聞いているだけにすぎません。
実際に、離反客のうち80%が直前の顧客満足度調査で「満足している」と答えていたとする調査結果もあります。

離反者でも満足度調査だと「満足」と答える人が多い

関連記事:
顧客満足度(CS)とは?関連指標や計測方法、向上のポイントを徹底解説!

一方で、NPSはもともと「収益性と連動するロイヤルティ計測のための指標を探す」という発想から研究が始まっています。

顧客ロイヤルティと収益性の関係を解き明かすために試行錯誤を掲げた結果、推奨意向を質問し、顧客を「推奨者」「中立者」「批判者」にセグメント分けする手法が生まれました。

NPSは「すすめたいと思いますか?」という質問を通して、「他者にすすめる」という未来の行動を点数化するため、今後の収益性と連動すると考えられています。

健康食品通販大手のECサイトにおける調査を行った結果、NPSが高いサイトほど一年以上継続利用している顧客の割合が高い事がわかりました。

以前リリースした「自動車業界調査レポートPart.1」という、弊社と日経BPコンサルティング社の共同調査においても、NPS®と国内販売台数の年平均成長率は非常に強い相関関係にあることが示されています。

このように、NPSは異なる業種でも売上や成長性と深く関連していることが見て取れます。

NPSと収益の相関図

関連記事:
NPS®と収益性について

NPS®の具体的な活用方法を知りたい方はこちらの事例もご覧ください。

NPSの事例紹介

日本法人独自のベンチマーク調査で自社のポジションを明確化|株式会社アデコ

世界60ヵ国に事業展開しているアデコグループは、グローバル共通でNPS調査を実施して来ましたが、2020年には日本独自にベンチマーク調査を開始しました。
業界内における自社のポジションを把握することで、事業展開のヒントを得ています。

詳細な事例はこちら:アデコ株式会社

全社一丸となって取り組むCX戦略で、「顧客体験No.1」を実現|株式会社トリドールホールディングス

丸亀製麺を運営する株式会社トリドールホールディングスでは、専門部署であるグロースアナリシス部を設置し、店舗で収集するお客様アンケートを分析しています。

コロナ禍である2020年のNPS調査においては、推奨度を0〜8と回答した「非推奨者」のフリーコメント分析では「マスクの着用ができているかどうか」がNPSのスコアを下げている要因となることが判明。マスクの着用徹底に取り組み、NPSのスコア改善に成功しました。

詳細な事例はこちら:株式会社トリドールホールディングス

▼他の事例はこちらもご参照ください。

関連記事:
【国内】NPSを活用する企業事例8選!取り組みのポイントも解説

よくある質問(FAQ)

Q1. NPSとCS(顧客満足度)の使い分け方は?

A. CSは「商品ごとの品質チェック」や「短期的な不満の発見」に適しており、NPSは「ブランド全体のファン作り」や「中長期的な事業成長の指標」に適しています。両方を計測し、CS(個別の満足)がNPS(全体の推奨)にどう影響しているかを分析するのが理想的です。

Q2. リレーショナル調査とトランザクショナル調査、どちらから始めるべきですか?

A. まずは「リレーショナル調査」から始めることを推奨します。現状のブランド全体の立ち位置を把握し、優先的に改善すべきタッチポイント(接点)を特定してから、その接点に対して「トランザクショナル調査」を行うと効率的です。

Q3. 日本企業のNPS平均スコアはどのくらいですか?

A. 日本人は中心化傾向(中間の点数をつけたがる)があり、欧米に比べてスコアが低くなる傾向があります。業界によって異なりますが、マイナスポイントになることも珍しくありません。他社との比較だけでなく、自社の過去スコアとの比較(時系列推移)を重視することが大切です。

関連記事:
NPS®は日本人に向いてない?NPSがマイナスになる理由や計算方法を紹介!

Q4. NPSが低い場合、まず何に取り組むべきですか?

A. まずは「批判者(0〜6点)」のフリーコメントを分析し、彼らが共通して感じている「不満の根本原因(ペインポイント)」を特定しましょう。その原因を取り除くことで、マイナス評価を減らし、中立者や推奨者への転換を目指します。

Q5. 従業員満足度(eNPS)とは何ですか?

A. eNPS(Employee Net Promoter Score)は、「職場を親しい友人にすすめたいか」を問う指標です。従業員満足度が高い(eNPSが高い)企業は、サービスの質が向上し、結果として顧客NPSも高くなるという「サービス・プロフィット・チェーン」の相関関係が認められています。

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