サービスプロフィットチェーン(SPC)とは?顧客と従業員の満足度が企業収益に繋がる仕組みを解説 | 株式会社エモーションテック

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2023.09.26

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サービスプロフィットチェーン(SPC)とは?顧客と従業員の満足度が企業収益に繋がる仕組みを解説

サービスプロフィットチェーンとは「従業員満足」「顧客満足」「企業収益」の3つが良い循環を作ることを示したモデルです。
従業員満足が従業員の生産性を高めることで顧客満足が向上し、そして顧客満足が企業収益や事業成長を促進すること、そして事業成長がまた従業員に還元されるというサイクルが示されています。
特に接客業など顧客接点が重要となるビジネスモデルにおいては非常に重要視されている考え方です。
本記事ではサービスプロフィットチェーンのモデルを詳細にご説明するとともに、実際にどのように取り組んでいけるのかについて解説していきます。

サービスプロフィットチェーン(SPC)とは?

サービスプロフィットチェーン(SPC)では、企業が従業員を大切にすることで、従業員のサービス品質が向上し、その結果顧客の満足度、そして企業収益の向上につながるという考え方がモデルとして表されています。1994年にハーバード大学のヘスケット教授とサッサー教授らが”Putting the Service-Profit Chain to Work”という論考で発表し、日本でも『バリュー・プロフィット・チェーン』という書籍で詳しく紹介されています。

また、日本のホテルを対象に従業員満足度と顧客満足度そして稼働可能客室あたりの粗利益の関係を6年間追跡調査した研究があります。分析の結果、従業員満足度はサービス品質、サービス品質は顧客満足度、顧客満足度は稼働可能客室あたりの粗利益に関係があるこがわかり、日本においてもSPCモデルが実証的に示されています。

サービスプロフィットチェーン(SPC)を実現する7つのステップ

サービスプロフィットチェーンでは企業の活動が「7つのステップ」に分けられ、それぞれの活動が円環的に循環することで恒常的な企業収益の改善が可能になると考えます。

7つのステップは以下の通りです。

  1. 従業員へのサービス品質(内部品質)が従業員満足度を高める
  2. 従業員ロイヤルティが従業員の生産性や貢献度を高める
  3. 従業員の生産性がサービス価値を高める
  4. サービス品質が顧客満足を高める
  5. 顧客満足が顧客ロイヤルティを高める
  6. 顧客ロイヤルティが収益性と成長を促進する
  7. 収益と成長が従業員に還元される

それぞれのステップについては詳しく見ていきましょう。

1.従業員へのサービス品質(内部品質)が従業員満足度を高める

第1段階では、企業内における職場環境のサービス品質が重要視されます。従業員満足度を高めるのに最も貢献するのが優れた内部品質を実現することです。「従業員も顧客である」という意識で従業員向けのサービス品質の改善が要求されるのです。

内的品質とは、従業員が自分の仕事、同僚、会社に対して抱いている感情によって測ることができます。また内部品質は、人々が互いに持つ態度や、互いに奉仕し、尊厳を認め合う方ことによっても特徴づけられます。快適な就労環境は、組織への帰属意識を高めることに繋がります。

2.従業員満足度が従業員のロイヤルティを高める

第2段階では、従業員満足が従業員ロイヤルティを高めます。快適な就労環境は、組織への帰属意識を高めます。

また、組織全体やチームへの貢献意欲は従業員ロイヤルティの強さに比例するため、ESの向上によって組織の一体感が強まる段階です。

3.従業員ロイヤルティが生産性や貢献度を高める

第3段階になると、従業員ロイヤルティが従業員の生産性や貢献度を高めることが示されています。ロイヤルティの高い従業員は定着率が高まるとともに、モチベーションやエンゲージメントが向上している状態にあり、高い生産性を発揮します。

組織全体やチームへの貢献意欲は従業員ロイヤルティの強さに比例するため、従業員ロイヤルティの向上によって組織の一体感が強まる段階です。

4.従業員の生産性がサービス品質を高める

第4段階では、貢献度や生産性向上が顧客サービスの品質へと転化される段階です。組織内部で高めてきた付加価値を、外部に向けて発出することで顧客にとってのサービス品質が向上されます。

顧客にとってサービス品質を向上させるためのには、最初から正しいサービスを提供することも重要ですが、ミスやエラーが発生した時に効果的なリカバリーができるかも重要になってきます。個々のケースにおいて従業員が顧客ニーズに合わせた対応ができるだけの自由な裁量を持っているかも重要視されます。

5.サービス品質が顧客満足を高める

続く第5段階では、向上した顧客サービスが顧客満足(CS)を生むことを示しています。サービス品質の向上が顧客によって実感された時、顧客の心理に変化が生まれるのです。

今日の顧客は価値を求める傾向にあります。顧客の期待に対して十分なサービス品質・サービス価値を示すことができたかが顧客満足に大きな影響を与えます。

6.顧客満足が顧客ロイヤルティを高める

第6段階では、顧客満足が顧客ロイヤルティを育みます。サービスに対して価値を感じ、満足感を感じれば、受け手はそのサービスをまた希望するようになります。この繰り返しが顧客ロイヤルティへと繋がり、リピートを生み、「一見客」を「顧客」に変えていきます。

顧客ロイヤルティは大多数の企業でも重要なものと認識されています。フォーチュン1000の3分の2以上はNPS(ネットプロモータースコア)を用いて顧客ロイヤルティを計測し、常に自らのサービスが顧客にどのように受け入れられているかをウォッチしています。

関連記事:「NPS®とは?顧客満足度との違い・質問方法・事例まで詳しく解説!

7.顧客ロイヤルティが収益性と成長を促進する

そして最終的に顧客ロイヤルティは収益や企業成長へと繋がります。ロイヤルティの高い顧客はリピートによる利用増加、より高価なサービスや商品の購入、そして紹介により新しい顧客を連れてくるといった形で収益や企業成長に対して大きな貢献をしてくれるようになります。

前述した顧客ロイヤルティ指標であるNPSは収益との相関が強いことも特徴として挙げられ、その観点からも多くの企業が活用していると考えられます。

収益と成長が従業員に還元される

このように7つのステップを経てもたらされた企業収益は、従業員の報酬や福利厚生の改善に再投資され、従業員満足度、顧客満足度、そして企業収益が向上するという成長サイクルが回っていきます。

従業員満足度、顧客満足度、収益など個々の指標を見るだけではなく、それぞれの指標を結びつけて全体像を描くことこそサービスプロフィットチェーンの大きな特徴といえます。

サービスプロフィットチェーン(SPC)の実現に取り組むスターバックス・コーヒーの事例

スターバックス・コーヒーは高いブランド価値を持っており、高いロイヤルティを持つ顧客の存在で知られています。このブランドイメージの実現に大きく貢献しているのが、従業員満足度(ES)です。ESの向上に関してスタバと普通の飲食店との決定的に違いがあります。それは充実したサポート制度です。たとえば、およそ2カ月間にわたる80時間の研修を行うなど、従業員たちが最高のサービスを提供できるように丁寧なサポートを行なっています。この体験はスタバの一員としての帰属意識を高め、自身のサービスへの誇りを育みます。そうなると、店舗で高いモチベーションを維持しながら日々の業務をこなすことが可能になるのです。

スタバのサポートには、従業員が日々成長を実感できる評価システムも組み込まれています。研修の4カ月後には店舗マネージャーとの面談があり、自己成長のための目標設定を行なうのです。コーヒーのスペシャリストである「ブラックエプロン」という社内資格も定められ、その認定のためにマネージャーも含めてコーヒー知識の習得に励むという社風もあります。さらに、従業員の福利厚生の一環として、週に100グラムのコーヒー豆、1日3回ドリンクの支給といったサービスの利用が可能になります。スタバでは、このような商品知識の理解とスキルアップや福利厚生が同時に満足できる仕組みにあふれているのです。

サービスプロフィットチェーン(SPC)を構築するための方法

サービスプロフィットチェーンを企業において実現させていくためには、7つのステップがしっかりと回っているかを計測しながら、それぞれの要素においてなにが課題となっているのかを把握し、改善PDCAを回していくことが重要です。

従業員満足度と顧客満足度をそれぞれ調査して把握するといったことは一般的に行なわれていますが、それぞれを連動させることはできていない企業が多いのではないでしょうか。

サービスプロフィットチェーンの大きな特徴は従業員エンゲージメントが顧客ロイヤルティへと繋がっていくという、社内→社外へと価値が転換されていくことを示すことにあります。

従業員調査と顧客調査を連動させることで「従業員満足(従業員エンゲージメント)」「顧客ロイヤルティ」「収益」それぞれの指標の関係を見るとともに、サービス品質に対して社内(従業員)と顧客においてどのような認識のギャップがあるかを可視化します。

そうすることでサービスプロフィットチェーンを定量的に示しながら、どこに課題があるかを把握し、良い循環の実現に向けた施策を実行することが可能になります。

日本におけるサービスプロフィットチェーン(SPC)の事例

株式会社ゴンチャジャパンの事例

株式会社ゴンチャジャパンでは従業員調査と顧客調査の双方を実施することで、それぞれの関係性を定量的に示しています。

店舗ごとにeNPS、NPS、売上前年比をそれぞれ測り、その関係性を見たグラフが下図になります。NPS(顧客ロイヤルティ)の高い店舗ほどeNPS(従業員エンゲージメント)、そして売上前年比が高いことが示されており、サービスプロフィットチェーンの循環が示されている好例です。

ゴンチャジャパンはさらにそれぞれの調査において、NPSに影響を与える体験が何かを分析し、現場における改善PDCAを回しています。

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