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従来の顧客ロイヤルティ指標の限界、そして新たな指標となりうるNPS®の概要と活用方法

少子高齢化、市場の縮小、海外企業の日本進出や国内企業の新規参入による競合他社の増加など、現代では、さまざまな理由から新規顧客獲得が難しくなっています。そこで重要となるのが既存顧客の維持、深耕です。

既存顧客のロイヤルティを高めると、既存顧客が新たな顧客を連れてきてくれる可能性が高くなります。それが実現すれば今後も持続的な成長が望めるでしょう。

しかしそのためには、既存顧客がどの程度、自社に信頼、愛着を持ってくれているかを知らなくてはなりません。そのカギとなる顧客ロイヤルティを測る新たな指標NPSについて、詳しくお伝えします。

目次

企業の成長を阻む要因と既存顧客の重要性

今、既存顧客の重要性が増している具体的な理由とは何でしょうか。新規顧客獲得に頼った企業の成長が困難となっている要因について見ていきましょう。

人口の減少による国内市場の縮小

現在、1億2千万人を超える人口は減少の一途をたどっており、2053年には1億人を割ると予測されています。人口の減少自体、経済にとってはマイナス要因ですが、それ以上に大きいのは少子高齢化。経済活動の中心となる購買意欲の旺盛な年齢層の減少は、日本経済を着実に縮小に向かわせます。
国立社会保障・人口問題研究所が2017年に発表した「日本の将来推計人口(平成29年推計)報告書」(注1)によると、2020年の時点で生産年齢人口(15~64歳)は全体の「59.1%」、65歳以上は「28.9%」。しかし、人口が1億人を割り込む2053年はそれぞれ「51.6%」、「38%」と推計されています。

消費者購買行動の変化と商品ライフサイクルの短期化

購買意欲の旺盛な生産年齢人口の減少にともなう市場成長の鈍化に加えてインターネットの普及を原因とした消費者行動の変化は新規顧客に頼った企業の成長を一層難しいものにします。
総務省が発表した「平成23年版 情報通信白書」(注2)によると、1997年にはインターネット普及率「9.2%」だったものが、この調査結果が発表された2004年には「66%」と7倍以上に増加しています。
インターネットを効果的に用いれば、テレビや新聞に比べて低コストで広告宣伝ができますし、全国のユーザーにも簡単に商品・サービスを紹介することもできるでしょう。しかし、それと同時に国内のみならず、国外も含めた商品・サービスの比較検討のハードルが下がることで、企業からみれば縮小する国内市場にこれまで以上に多くの競合企業がひしめくという状況が生じています。

また、商品・サービスのライフサイクルの短期化と差別化の困難も新規顧客に頼った企業の成長を難しいものにします。
中小企業庁が2005年に発表した「2005年版 中小企業白書のポイント」(注3)によると、1990年代にヒット商品のライフサイクルが1年未満だったものは全体の「4.8%」。しかし、2000年代に入ると一気に4倍近い「18.9%」まで増加しています。
消費者によるインターネットでの情報収集が進む中、企業は絶えず競合他社との差別化を目的とした新商品の開発に力を注ぎますが、それにも限界があり、新規顧客獲得のための値下げによる消耗戦が避けられない状況に陥りがちです。そのような状況において、企業の成長を助けるカギとなるのが、既存顧客の維持、深耕なのです。

 

既存顧客の維持、深耕でカギとなる顧客ロイヤルティ

既存顧客の維持、深耕を進めるうえで大きなカギとなる顧客ロイヤルティとは、一体何でしょうか。顧客ロイヤルティについてさまざまな観点から紐解きます。

顧客ロイヤルティとは?

従来、企業と顧客の関係性を強化するものとして、顧客が購入した商品・サービスにどの程度の満足を得ているのかを測る顧客満足度という指標が用いられていました。
しかし近年、顧客が商品・サービスに対して高い満足度を示していても、「サポートが悪い」「購入に至るプロセスに手間がかかる」「競合のほうが低価格」など何らかの要因があればすぐ、商品・サービスから離れてしまうと判明したのです。
言い換えれば、「満足度の高さは必ずしもリピートにつながるわけではない」となります。
そこで企業は、商品・サービスの質を高めると同時に企業やブランドに対する信頼を高めてもらう、愛着を持ってもらう、つまり顧客ロイヤルティの向上をより重視するようになったのです。

顧客ロイヤルティ向上のメリット

顧客ロイヤルティを向上すると、企業はメリットを享受できます。そのメリットについて見ていきましょう。

1. リピート率の向上

弊社が行った調査(2015年5月)によると、あるECサイトでの年間平均利用回数で、ロイヤルティの低い顧客が8.93回だったのに対し、高い顧客は16.78回と約1.9倍も多いという結果が出ました。このように顧客ロイヤルティの質が高まれば、リピート率の向上が見込めるのです。

2. 購入単価のアップ

弊社が2016年5月、アパレルブランドを対象に年間平均購入金額を調査したところ、ロイヤルティの低い顧客は9,095円、高い顧客は28,446円となりました。さらに1回あたりの購買金額にもロイヤルティの高さが影響しており、その差は約1.3倍という結果が出たのです。
このことからロイヤルティの高い顧客は、リピート率の向上だけでなく1回の購入単価も向上、つまり企業の売上に大きく貢献することがわかります。

3. ファン化した顧客の口コミによる拡散効果

ロイヤルティの高い顧客が企業にもたらすものは、購入による利益だけではありません。企業に対し高い信頼感と愛着を持つ顧客は、家族や友人、会社の同僚などに積極的に商品・サービスを推奨してくれるのです。
弊社が行った調査(2015年7月)によれば、あるスポーツメーカーではロイヤルティの高い顧客の実に85%が他者にすすめた経験があると回答しました。新規顧客獲得のコストは既存顧客の5倍かかると先述しましたが、既存顧客のロイヤルティを高めれば、コストをかけずに新規顧客獲得が可能になるのです。

4. 顧客の意見を参考にした商品・サービスの改善、新規開発が可能になる

企業やブランドに愛着を持った顧客は、長い期間にわたり商品・サービスを使いこんでくれます。そのため、企業でも気づかないような商品・サービスの不備や使いづらい点を指摘してくれる場合があるのです。それは改善や新規開発のヒントにつながる宝となるでしょう。

顧客ロイヤルティ向上に必要な顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の向上

顧客のロイヤルティを高める方法はいくつか考えられます。まずやることは、「ユーザーが商品・サービスを認知してから興味を持ち、購入して利用、そしてアフターサポート」という一連の顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の向上です。顧客体験におけるすべてのプロセスにて高い満足を与えると、顧客ロイヤルティが向上します。

顧客体験が顧客ロイヤルティ向上に重要な理由

なぜ、顧客体験の向上がロイヤルティの向上につながるのか、その最大の理由は、「質だけで競合との差別化が困難になった」点にあります。先述のとおり、商品・サービスのライフサイクルが短くなったため、企業は次から次へと新商品・サービスを出さなければ、利益の向上は難しいと考えられているのです。
しかし技術の進化もあり、新商品・サービスを出してもすぐに競合から似たようなものが発売されてしまう状況も増えています。つまりコモディティ化(品質や機能などこれまで商品に存在した差がなくなっていくこと)が進んで差別化を図ることができない、商品・サービスの質だけでは勝負しづらい、という状況になってきているわけです。
質が変わらない場合、価格競争になりますが、そうなると当然、多くの中小企業は大企業にはかないません。また価格勝負の場合、一度は勝てたとしても、次に自社よりも低価格の商品・サービスが出れば、顧客はすぐにそちらに流れてしまうでしょう。
結果として、ロイヤルティの高い顧客を獲得できず、価格競争で疲弊してしまいます。そうした意味でロイヤルティの高い顧客を獲得するには、商品・サービス購入に至るすべてのプロセスにあたる顧客体験の向上がカギとなるのです。

 

※顧客体験向上に関する詳しい情報はこちらをご覧ください。

顧客体験とは?顧客体験を向上させるマーケティング手法と事例を紹介

 

顧客体験とは?顧客体験を向上させるマーケティング手法と事例を紹介

従来型顧客ロイヤルティ指標の限界と計測の重要性
続いて、顧客ロイヤルティを計測する指標には何があるか、これまでの指標では何が問題かなどについて見ていきます。

代表的な(従来型)顧客ロイヤルティ指標

まず、これまでの顧客ロイヤルティ指標についてです。いくつかありますが、ここでは以前から使われている顧客ロイヤルティ計測の指標を3つご紹介しましょう。

■顧客満足度

顧客満足度とは、顧客が企業に対して持つ満足度を数値化したもので、計算方法はいくつかあります。例えば、商品・サービス購入前の期待値と実際の満足度の差で算出するといったものです。先述のとおり、顧客満足度は顧客ロイヤルティとは異なるもので、以前は顧客と企業の関係性を見るうえで重要な指標のひとつとなっていました。

■LTV

「ライフ・タイム・バリュー」の頭文字を取ったもので、顧客一人あたりの生涯売上げを指します。LTVは「(平均購買単価)×(年間平均購買頻度)×(粗利率)/(年間離反率)」にて算出しますが、ほかにも計算方法はいくつかあります。

■ 顧客継続率

言葉が示すとおり、どれだけの顧客が継続して自社の商品・サービスを購入しているかを調べるものです。ある一定の期間内で、期間終了時点に残っている顧客数を期間開始時点での顧客数で割って算出する方法があります。

従来型顧客ロイヤルティ指標の限界

前項で3つの指標を見てきましたが、それぞれいくつかの問題点があるのです。まず顧客満足度についてですが、先述のとおり、商品・サービスに満足していても継続的な購入にはつながりません。では、LTVや顧客継続率が高ければ、継続的な購入意欲の表れとなるのでしょうか?
実は、継続的に購入して売上が高まったとしても、ロイヤルティが高い顧客になるとはいえません。なぜなら、LTVや顧客継続率の高い顧客が「自社の商品・サービスを家族や友人にすすめたい」と思っているかどうかわからないからです。
LTVや顧客継続率はあくまでも商品・サービスの購入だけに着目した指標で、自社の商品・サービスやブランドに高い信頼性や愛着を持っているかどうかを調べるものではありません。そのため自社のファンになり、他者に推奨したいと思っている、もしくはすでにしている人を顕在化させる指標が必要となるのです。

 

NPS~新しい顧客ロイヤルティ指標~

NPS®とは? その定義と歴史

従来型の指標では、これからの時代に生き残っていくための顧客獲得にはつながりません。そこで満足度や商品だけに着目したものではない新たな指標が求められるようになり、考え出されたものがNPSだったのです。
NPSはネット・プロモーター・スコアの頭文字で、アメリカの大手コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニー社のフレドリック・F・ライクヘルド氏が、2003年にハーバード・ビジネス・レビューで発表したことから始まりました。満足度ではなく、商品・サービスを友人、家族にどの程度すすめたいかを0~10点で点数をつけてもらい数値化します。

NPSのメリット

■顧客ロイヤルティが数値化されるためわかりやすい

従来の指標では、顧客が他者へ推奨するかどうか、把握できませんでした。しかし、NPSなら他者への推奨度が数値化されるため、顧客ロイヤルティを把握しやすくなります。

■ 顧客の推奨意向がわかるため、将来的な収益を予測でき、経営に生かしやすい

従来の指標からは、現在の顧客満足度がわかります。しかしNPSなら「他者に推奨する」という未来の行動を点数化するため、今後の収益性の予測に役立ち、経営にも活用できるのです。

NPSのデメリット

■顧客ロイヤルティを問う設問の設定が難しい

顧客ロイヤルティを正確に計測するには、他者への推奨度を点数で評価してもらうだけでなく、「なぜ、その点数を選んだか」を問う必要があります。しかし、そこで何を問うかを間違えてしまうと正しい評価になりません。つまり、顧客ロイヤルティを問う設問の設定が難しいのです。

■ 日本人はどちらかというとマイナス評価に触れがちなため、正確な結果にならない場合も

ある調査では、日本人は諸外国人と比べ、アンケートの回答が「どちらでもない」に傾きやすいという結果が出ています。そのため、スコアでの回答だけでは正確な結果にならない場合もあるのです。

 

NPS調査(アンケート)の方法

NPSを調査するための方法をご紹介します。

調査設計方法

一般的なNPS調査では、他者への推奨度スコア(0~10)以外に次のような設問を設定します。

■ 推奨度スコアを付けた理由(5段階程度の設問から回答してもらう)

■ロイヤルティ構成要素(商品・サービスの魅力、接客態度、商品・サービスの使いやすさ、アフターフォローなど企業により10~15個程度の設問を用意)

■属性・セグメント・行動(具体的な改善要望などを記述してもらう)

データ収集方法

データは、インターネットや紙を用いたアンケートにて集めます。

 

※NPS調査に関する詳しい情報はこちらもご覧ください。
顧客体験を向上させるために重要なNPS。そのアンケートのつくり方のポイント

 

NPS 活用事例

最後に、実際にNPSを導入している企業の活用事例を2つ紹介します。

大手飲食チェーン店

大手飲食チェーンを経営するA社では、店舗を訪れる顧客の満足度を調査するため、さまざまな取り組みを行っていました。しかし店舗数の多さから、コストがかかったり調査担当者から人手不足を指摘されたりするという状況だったのです。そこでコスト削減かつ改善に結び付く策としてNPSを導入しました。
結果、人手が少なくともコストをかけずに全体像を定量的に把握できるようになり、改善点も明確に。現在は店舗ごとの分析で課題を抽出し、その結果を共有しつつ、改善を進めています。

大手楽器メーカー

大手楽器メーカーのB社では、商品を購入した顧客の満足度やイベント開催時の評価が思うように定まらず、商品の改善やイベント効果を明確に検証できない課題を抱えていました。そこで、正確な調査を行うためにNPSを導入したのです。
その結果、他者への推奨度やイベントの継続的な参加需要が数字として可視化されるようになり、属性別のニーズの把握や将来的なブランド戦略の立案に大きな効果が見られました。

 

※NPSの活用事例に関してはこちらもご覧ください。
【業界別事例付き】顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)至上時代のNPS活用方法

 

NPSは従業員ロイヤルティの指標にも活用可能

NPSを用いるのは顧客だけではありません。自社の従業員に行うとeNPS(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)と呼ばれる従業員ロイヤルティを計測できるのです。この結果は、生産性の向上や離職率の改善に役立つでしょう。

 

企業の継続的な成長を実現するための一助となるNPS

従来の顧客ロイヤルティを計測する指標は、今現在の顧客数や満足度を見るには、ある程度の効果を発揮します。しかし、「将来的に収益につながる顧客を獲得できるのか」という点では限界があるため、結果をそのまま経営に活用するのは困難といえるのです。
そこで、新たに顧客ロイヤルティを明確に数値化する指標となるのがNPS。顧客に対し、友人や家族への推奨意向を問うため、将来的な収益の予測も立てやすく、企業の成長戦略策定にも貢献します。
また、NPSは顧客だけに活用するものではありません。従業員に対して活用すると、職場の問題点を明確にし、離職率防止にも役立つといったメリットが得られるのです。自社の問題解決に活用してみてはいかがでしょうか。

 

NPS®解説資料ダウンロード

以下からダウンロード このような方におすすめ

・NPSを活用して顧客の本音を把握したい

・具体的な質問設計の考え方が知りたい

・事例を交えながらどの様に分析したら良いか知りたい

資料の内容

・課題を明確にするための質問設計方法と質問例

・取得したアンケートデータをフル活用し顧客の不満を可視化するための分析方法

・詳細な分析に基づく改善事例

個人情報の取扱いについてはこちらからご確認ください。

 

 

出典:

 (注1)日本の将来推計人口(平成29年推計)報告書|国立社会保障・人口問題研究所(PDF)

 (注2)平成23年版 情報通信白書|総務省

 (注3)2005年版 中小企業白書のポイント|中小企業庁(PDF)

 

参考:

平成30年版情報通信白書|総務省

商品ライフサイクルの短期化|中小企業庁

1:5の法則|シナジーマーケティング

 日本の将来推計人口(平成29年推計)|国立社会保障・人口問題研究所

【ブランド戦略】顧客ロイヤルティとは?顧客を引き付けるマーケティング手法|EmotionTech

NPS®とは?顧客満足度との違いから質問方法、日本国内の事例まで詳しく解説!|EmotionTech

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